aki_omp2004-10-19

ジェフリー・ディーヴァーの「石の猿」を読了。
サックス&ライムシリーズ第4弾。
今回の半身不随の元警部補ライムとアクティブな女性鑑識サックスの相手となるのは蛇頭であるゴーストと呼ばれる移民の不法斡旋者であり冷酷な殺人者。



今回もいつも通り、読み出したらページを捲る手を止まらせない程に一気読みしたくなる様な展開にハラハラしながら読める。
でも、結構今回は不満もある。
(以下ネタバレあり、読み終わった人のみね)





何故ならば、登場人物一人一人のキャラクターの扱いにかなり不満がある。
中国からの移民で2家族が出てくるケド、それに対しての心情などの描写などがあまりにもヌルイ気がした。
不法入国2家族の内、主にウー一家の事について書いてあるが、それがどうも物足りない。
ディーヴァは恐らく色々中国の情勢や中国の家族の在り方を色々調べたのだろうが、
これでは正直、資料を読んで作り上げた家族像としてしか思えず、あまり有機的でないのでどうにも感情移入がし辛い。
事実登場回数は結構あるけれども、その扱いはラストに至るまで話の筋とは少しハズれて見えた。
更に言うともう一方の家族についてなど最初に少し出てきただけでその後ホトンド扱われていないのにかなり不満が残る。
もう一つの不満はこれに出てくるリー刑事の扱いだ。
この人に対してライムは少なからず親愛の情を持つのだけど、
その死に際して事後にライムの感情が描写されている場面が何も無いのだ。
珍しくライムが心を許せる相手であったのだから、それに対する思いがもう少し描かれていても良かったのでは無いだろうかと思える。
そして、セン船長。
この人は生き残った意味がストーリーの構造上在ったとは到底思えない。
(いくらサックスのダイビング時のハプニングを演出する為とは言え・・・・)


思うに、今回こう言う様な少しキャラクタ達の存在が薄くなったのは、この石の猿を執筆中に他の作品を書き始めてしまったからのかなぁと感じた。
だからこそ、そのキャラクタの心情に対しての感情移入度、描写性が少ないし、
自分で出した風呂敷もイマイチうまく畳めていないのかなと、ディーヴァーに対して少しコンセントレーションが足りないのを感じた。
ま、面白く読めたのではあるけれども、ディーヴァーにしては物足り無い感が残る。
中国の文化や家族への接し方に関しては良く調べている以上の面白みは無かったのも少し残念なところ。
★★★☆
ISBN:416321870X