aki_omp2004-10-23

ジェフリー・ディーヴァーの「魔術師 (イリュージョニスト)」を読了。
リンカーン・ライムシリーズの第5弾。
今回の敵は数々のイリュージョンを操る魔術師と言う連続殺人鬼。





★★★★★
まさにイリュージョン。
「あ!」、「あ?」、「あ”」、と言う間に読んでいる時間が過ぎていく。
(以下ネタバレ)









この話の功の一つは未だに変装と言う技術が有効であるというイリュージョンを魅せてくれる事だろう。
その変装とは、奇妙なマスクを被って顔を変えるとかそう言う方法では無く、
もっと現実的に見ている人の心理を操る変装だ。
例えば、それはココにまさかこの様な人がいるはわけは無いと言った人の心理にそれは付込み、それを魔術師特有の技術であるメイクを合わせてそれを遂行する。
それはもちろん特定人から特定人への変化ならば不可能だろうが、
正体の曖昧な不特定者からまたその辺の不特定者への変装であるならば、その偽装を知らない第3者はまず間違いなく、そこに錯誤を起こすだろうとこのこの本は思わせてくれる。
この本には魔術師と言う題名の通り、数々のトリックを利用した犯人によるイリュージョンがあるが、この変装と言うイリュージョンに最も心惹かれた様に思う。




さて、もう一つの魅力はなんと言っても新キャラのカーラだろう。
カーラと言うキャラ、イリュージョニストの卵であり犯人の心理を使用されたトリックによりプロファイリングしていき、そしてそのイリュージョニスト特有の明晰な洞察力で犯人の狙いを看破するのにリンカーンにとても貢献している。
ここまで来ると、本編の主コンビはリンカーン&ライムでは無く、リンカーン&カーラであったのだと読みながら思えた。
この場合の私の中で意味する上のコンビの意味とは、いわゆるリンカーン&ライムにある様なある種の師弟関係では無く、ある時にはリンカーンの認識力をも上回る洞察力を持ち合わせ、その関係はほぼ対等と言って良いモノである様に感じる事ができ、
その点に関してカーラと言うキャラにある時には男にだって負けないとアッティテュードを彼女に感じる事が出来、誰よりも優れたキャラクターである事を一瞬認識する事ができる。








以下ホントネタバレ全開なので注意










そうこう思いながら、この話を読んでいた時だ。
物語の半ばで突然カーラの死体が発見される。
正直私はこの半ばで死ぬと事に
「何でこんな所で殺すんだよぉぉぉ!!!!!」
と正直、ディーヴァに対して噴飯やるかたない気持ちを持った。
しかしその数分後、やっぱりディーヴァだなぁと認識する。
つまりこの場面、イリュージョニスト:ディーヴァー、客:読者、サクラ:アメリアと言う図式が構成される。
そして、ジェフリー・ディーヴァーの面白さを再認識する。
その後ももちろんその様な図式を随所に多々見ることができ、
かなりの確立でその場に読んでいる読者である私が客演として招かれたのに嬉しく思う事請け合いだ。




結論として本書はリンカーンシリーズではコフィン・ダンサーと同列だと思える。
そして、シリーズになるとキャラクタを知る分読むのが楽しくなるがマンネリ化も進むと言うデメリットを多種多様なトリックを駆使して克服してあまりある様に本書は読める。




さてこの様に本書を楽しくほぼ一気読みで終わったのだが、ここで一つ謎がある。
それはカーラの本名だ。
本作でのカーラの名はステージネームだと言う。
では本名は何なのか?
カーラが本当は本名であるのか、それともアナグラム的であるのか、又はまるで別の名前なのかそれがまだワカラナイ。
本シリーズでカーラがレギュラーになるのであれば、後のシリーズでそれが明かされるのかなぁ?と思え多少のキャラ萌え的な要素が少し楽しみであったりする。
そして現在私はもし再登場するのであれば、ローランド・ベル刑事といい仲になっちゃったりして、などと妄想を逞しくしている。
ま、なにわともあれ、早くもこのシリーズの新作が楽しみである。